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「それにね、ロビ。あたしには野望があるの。追っ手から逃れて、いずれはこの国に真の情報をもたらすための野望がね」
「…まさか」
「そう。あたしが新聞社を作る。そしてあたしが矢面に立って、しがらみや政治思想に囚われない公平な情報を届ける…そんな当たり前の偉業を、あたしが為してみせるんだ。この逃走は、春への逃走なんだよ」
「そこまで考えていたとは。先輩とはいえ予想外でした。…ところで、そこに編集長の座は空いてますよね」
「ふふっ、当然でしょ!」
「はは、これは楽しくなってきた。先輩といると胃は痛くなりますが、退屈はしませんね!」
「頼りにしてるぜロビ君。編集長兼秘書としてこき使ってくれよう」
「今とあまり変わりませんね。…ところでリサ先輩、このペースだと予約した汽車に間に合いません」
「えぇーっ!さ、先に言ってよ!!」
「すみません、話を遮れる雰囲気でもなく…あとホットドッグをあまりにかわ、もとい美味しそうに食べてたので」
「聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするけど、それは汽車の中で聞こう!走るよロビ!」
はるか遠くに汽笛が響く大通りを、二人分の靴音が駆けていく。その後を追うように、ほのかに春の訪れが感じられるかのような爽やかな薫風が吹いたのであった。
革命は、きっとすぐそこに。
完
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