彼女の願いごと

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「ねぇ、あなたの話してくれた、とっても偏屈なおばあさんの作る絶品シチューが食べてみたいわ!」 「今食ったばっかなのに、もう飯の話なんて、食い意地張りすぎだろ」 「だってずっと食べてみたかったんだもの……でも太ってしまうかしら?」 「たかが一日食いすぎたくらいで太るもんか? どうでもいいけど夜メシが入る程度にしとけよ」  『もうこんな機会もないだろうから好きにすればいい』とは言いたくなくて、そんな憎まれ口を叩く。 「うう……食べたいものはたくさんあるのに、どうして私のお腹はひとつしかないのかしら……」 「……食いきれねー分は食ってやるから」 「……! 知ってるわ、『半分こ』って言うのよね! 私、それもやってみたかったの!」  きらきらと目を輝かせる、その姿が眩しくて目を細めた。  春も遠い、冬の寒い日のことだった。
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