未来から来たもの

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ピコーンピコーンという音が鳴り、ジャック=ローズが左腕に着けていた腕時計に似た細い機械が明滅した。その音に気付くと、冷たいような視線を送り、静かに顔の近くに持っていく。ビールの味に酔っていたギブソンとギムレットの二人も、神妙な表情でジャック=ローズを見た。 「はい」 ジャック=ローズの唇が動いて、短い言葉を発する。どうやら、その細い機械は電話機のようなものらしい。 「ええ。ええ。そうですか。了解しました」 通話が終わったらしく、機械の明滅が止まる。肉食獣が哀れな子兎を目の前にしたときのような目でギブソンとギムレットの二人を見つめ、ニヤァッと笑う。 「どうやら、迷子のお知らせのようだよ。フフフ。面白くなりそうね」 ジャック=ローズは腕時計のようなものを弄ると、空間に裂け目が出来て、中からUFOのような小型の乗り物が現れた。三人が乗って来たタイムマシンである。丸っこい形をして、乳白色のツルリとした外壁に覆われている。小型といっても、プレハブ小屋くらいの大きさがあり、三人を運んで来るのには十分な大きさだ。 窓や扉のようなものは付いてなさそうに見えるが、壁の一部が光り、ちょうど扉の形を形作る。 ギブソンとギムレットの二人が、その扉の形をした光の中に入っていき、空いたビールの缶をせっせとタイムマシンの中に運び入れた。二人の後から、大きな胸を揺らしながらジャック=ローズが乗り込む。 二人は中にある特殊な装置に空き缶を入れ、原子分解してアルミだけ抜き取る作業を開始した。作業は一瞬で終わり、タイムマシンの外壁に排出口のようなものが現われる。 缶に塗られた塗料やら、内側に残っていた液体が、そこから外に排出された。 排出が終わると、排出口のようなものは姿を消し、再びツルリとした外壁に戻った。 全ての作業が済み、タイムマシンは白い光に包まれ、一瞬にしてその姿を消した。
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