学校

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学校

翌朝、清野七海は危うく寝坊するところだった。 結局、昨日は田口蓮が帰った後も、リデルから未来の世界について色々と話を聞き出していたのだ。 おまけに、今朝、目覚まし時計がリリリリリと鳴ったのを、うるさく思ったリデルが尻尾で叩き落してしまったため、なかなか起きて来ない七海に痺れを切らした母親が起こしに来るまで熟睡してしまっていた。 当のリデルはというと、七海のベッドの中で気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てていた。見かけは普通のフェレットそのものである。尻尾を自分の口元に寄せて真ん丸になって寝ていた。 目覚ましを止めてしまった犯人がリデルだと知らない七海は、微笑ましく思いながら、指で優しくリデルの背中を撫でてやる。 七海は床に落ちていた目覚まし時計が壊れていないことを確認すると、大急ぎでトーストを口の中に詰め込み、冷たい牛乳で流し込んだ。 急いで制服に着替え、髪を縛って家を出る。 走って行けば、十分に間に合う時間だ。 七海はこれも中国拳法の修行と思い、その若く健康な体を弾ませて行った。 「よう。今日は遅いじゃん」 校門のところで田口蓮に会った。サッカー部の朝練習のため、七海よりも早く学校に来ている。 「目覚ましが鳴らなかったのよ」 剽軽な性格とは違って、サッカー部に所属してそこそこシュッとした顔立ちをしている蓮は、それなりに女子からの人気が高い。校門のところで待っているというシチュエーションは二人が付き合っているという誤解を招きかねないため、ぶっきら棒に七海は答える。もっとも、七海にとってはこれがいつもの塩対応で、そういう態度でもいられる相手は学校の中ではありがたい存在でもある。 「フェレットはどうしてる?」 軽い調子で蓮が聞くと、 「僕、リデルだよ」 と、ヒョイと七海のカバンの中からリデルが首を出した。
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