未来から来たもの

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未来から来たもの

田口蓮が七海の家を後にしたその頃。 二人の家の近くのコンビニエンスストアに、怪しげな雰囲気を醸し出す三人組がやって来ていた。 背は低いが、ガッチリとした体格の男が、カゴいっぱいにビールの缶を詰め込み、レジに持っていく。陰険な目付きの痩せぎすな顎の尖った男がICカードを出し、カード読み取り機にくっ付ける。ピピッという甲高い電子音が無邪気に鳴り、無事に決済が済む。 コンビニのレジに立っていた若い男の店員は、大量のビールの缶をビニール袋に詰めながら、異様な風体の三人組をチラチラと横目で見ていた。一際目立つ背の高い女が、男二人を従えているように見える。外国人の血が混ざっているのか、女の白い肌はエキゾチックな輝きを放っている。胸元が大きく開いたドレスのような衣装を着て、たわわに実った乳房を殊更に強調している。スラッとした長い足が、お尻の形がくっきりと出るショートパンツから覗いている。 店員の男は、「歩くフェロモン」というキャッチフレーズで、近所のパチンコ屋のイベントに来ていた芸能人の若い女を思い出した。その女も出るところが出て、引っ込むところが引っ込んだ、色気のある体型をしていたが、目の前に立つ女は、さらに輪をかけてグラマラスだ。 どこかの高級店のホステスかな、と思ったが、彼の知る限り、この辺りにそういう店はなかった。また店にやって来るかな、という淡い期待を抱いたが、たった今、支払いに使われたICカードが偽造だったことを知って青ざめるのは、翌日になってからである。
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