忌むべき色彩

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忌むべき色彩

乳白色。 黄味がかっているようでいて、灰色にも青味をおびても見える。 どこか硬質で、透き通っているようにも見え、光を内包しているようにも、あるいはそれ自体が発光しているようにも見える。 そうかと思えば、艶かしく、じっとりと湿地に潜む生き物の肌のように、怪しく光を反射しているようにも感じる。 まるでそれ自体が呼吸しているかのような、空気をはらんでいるかのような喩えようのない滑らかな柔らかさ。 「これは、チタンか何かを混ぜておられるのですか?」 『白』に定評のある作家だった。 描かれているのは、年の頃は十歳か、それより幾らか幼いくらいの子供達。 遊具の前に腰掛けて、お気に入りの玩具を携た無邪気な姿。 ブランケットに包まって顔だけ出してみせた、愛くるしい仕草。 6、8号程の画額に、それぞれが行儀良く収まっている。 白く、浮き立つ滑らかな肌、丸い頬の輪郭。 血色の良い、ふっくらとした唇からは湿り気を。 体温さえ伝わってくるようだ。 耳を澄ませば穏やかな吐息が聞こえる。 皆、深く瞼を閉ざしている。 瞬きの瞬間だろうか。 夢を見ている。 眠っているようにも、祈っているようにさえ見える。 瞼の裏には何を描いているのだろう?     
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