忌むべき色彩

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彼は、痛まし気に眉を顰め『それは残念なことです、お悔やみを』と言った。 それまでの快活さが瞬く間に消え、その時、彼はひどく憔悴したように見えた。 繊細な人らしかった。 「父とはどういったお知り合いで?」 「同郷で同大同学科といったところです」と、彼は静かに微笑んだ。 意外だった。 父の知人にこんな著名な画家がいたことが。 もっと早く知っていれば、と僕は内心、父を恨んだ。 その後、僕は四方氏と長い間、話こんだ。 気付くと閉館の時間を過ぎていた。 肝心の絵を碌に見れていない、焦る僕に、四方氏は言った。 「なら僕のアトリエにいらっしゃい。そこなら時間を気にせずいくらでも見れますから」 達てもない誘いだった。 さすがに遇ったばかりで、それを受けるのは図々し過ぎるとは思ったが、そんなに簡単に辞退できるわけがない。 僕が返答に窮していると、彼はにこやかに微笑んだ。 「なにもそんなに遠慮しなくても好い、僕も今日はとても楽しかったから、また是非あなたのお話を聞かせて下さい」 「ではお言葉に甘えさせていただきます。ええ、是非に」 信じられない幸運だった。 僕は心の中で父に手を合わせた。
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