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星の歌声
「星の歌声」
乾いた風が吹き付ける野晒のバス停に、ちらほらと白髪の混ざった頭にマスクで曇るメガネをかけた冴えない少年が立っていた。一時間に一本しかやってこないバスを独りでぽつんと待っていた。悪戯に吹き付ける風から寒さを凌ぐ上着も持たず、心もとないよれた長袖のシャツにジーパンという格好をしていた。何度も鼻をすすり、手は霜焼けで紅くなっていた。バスがやって来るまで残り二十五分ほどとなった頃、少年に話しかける声があった。先程まで独りきりだと思っていたため驚き周囲を見渡すが人影はチラリとも見えない。落ち葉が嗤っているのか、電線が人の真似事をしているのか、勘違いだろうと結論づけようとしたとき、何者かが肩に手を置いた。
「ごきげんよう。」
振り返ると、黒い装束に身を包んだ肌の異様に青白い男性が立っていた。
「私はセバスチャン。今宵、貴方を星々の奏でる音楽祭へご招待致しましょう。」
「音楽祭???」
男はからかう様子なく、物腰の穏やかな紳士然としていた。
「ええ。音楽祭、です。貴方はお聴きになったことがありますでしょうか?『星の歌声』を。」
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