1

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 その日、のんちゃんは、鉄棒で初めて逆上がりが出来るようになりました。 「やったー、まりちゃん今の見た?」 「うん、のんちゃんすごい」  ふと、横を見ると、少し遠くで園長先生がこっちを見て嬉しそうに拍手しているのが見えました。  のんちゃんもすごいけど、園長先生はもっとすごい。  それから、まりちゃんは幼稚園に行くのが、もっともっと楽しくなりました。  園長先生に会うのが、楽しみになりました。  ある日、まりちゃんが幼稚園に行くと、園長先生がいませんでした。  まりちゃんは、ようこ先生に聞いてみました。 「今日は園長先生、お休みなの?」  ようこ先生は、困ったように微笑みました。 「園長先生は、病気になっちゃって、お休みなのよ」  まりちゃんは、ビックリしました。 「お薬飲んだ? お薬飲んだら元気になるよ」 「うん、そうだね。園長先生はお薬飲んだから元気になると思うよ」  まりちゃんは、その日、いつものように友達と遊びました。  お弁当も食べました。  友達と一緒に遊んで楽しかったけど、ママの作ったお弁当も美味しかったけど、でも、なんだかちょっと楽しくありませんでした。  園長先生が魔法をかけてくれなかったからだ。  まりちゃんは、園長先生の「おはよう」が聞きたいと思いました。  次の日も、園長先生は幼稚園をお休みしました。  門の前に、ようこ先生がいました。 「おはよう、まりちゃん」 「おはようございます、ようこ先生」  ようこ先生は優しくて楽しくて大好きだけど、でも、園長先生の「おはよう」とは、どこか違っていました。  イルカ組のみんなも、園長先生の魔法がなかったからなのか、いつもと少し違っていました。  園長先生は遅刻しちゃったのかもしれない、と思いましたが、その日もずっと、園長先生は来てくれませんでした。  ママが迎えに来てくれた時、まりちゃんは、ようこ先生の服を掴んで言いました。 「私、園長先生に会いたい。どこにいるの?」  すると、隣にいたのんちゃんも言いました。 「私も会いたい」  イルカ組のみんなが、ようこ先生に言いました。 「私も園長先生に会いたい」 「僕も」 「あたしも」 「困ったわね。じゃあ、ママが『いいよ』って言ってくれたら、みんなで会いに行きましょうか?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加