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第3章 女神ニケ降臨
“プロクルステスの宿”の隣の宿で一泊した三人は、アテネへと足を運んだ。
「あ、ちょっと偵察してくるね!」
スフィンクスは引き止める間もなく、パタパタと飛び立った。
「見つかっていじめられなければいいけれど・・・」
エディプスは心配し、ゆっくりとアテネへの道を歩く。
「たぶん、テセウス王子のスポットがまだあって、わたくしたちに邪魔されずに見たいんじゃないですか?」
しばし無言の後、ポリュポンテースが口を開く。
「ぼっちゃま、テセウスさまの武勇伝って本当だと思いますか?」
「う~ん、なんかインチキくさいと思うけど」
ポリュポンテースはヒソヒソ声で続ける。
「わたくしもそう思います。もし、そのような怪人が何人もいるのなら、少なくともコリントス地峡の松の怪人や、隣国メガラの大亀の怪人については大問題になっているはずです。なのに、テセウスさまが退治した武勇伝以前に、一人の犠牲者も報告されていないというのは、おかしいです」
「確かに」
「コリントス地峡とメガラ、そしてアテネ近郊での連続殺人、ホテル経営者は金銭目的で惨殺された可能性が・・・。犯人が息子だと知ったアイゲウス王が、伝説を捏造し、もみ消した・・・」
ここで空がキラリと光り、二人が空を仰ぐとスフィンクスが降りてきた。金色の翼に、朝日が反射していた。
「何話してるの??」
「いや、別に・・・」
筋金入りのテセイオンを怒らせては大変である。二人は言葉を濁すしかない。
「さあ、ぼっちゃま、スフィンクスさま、そろそろアテネでございます。ご準備を」
ポリュポンテースが促すと、エディプスはスフィンクスを背負った。スフィンクスは翼をできるだけ小さくたたみ、ポリュポンテースがベールをかけ、スフィンクスの体を覆った。こうすれば、小柄な女性をおぶっているように見える。
「じゃあ、念を押すけど、スーちゃんが足を怪我した姉って設定だからね」
「うん、わかったよ、お兄ちゃん!」
「だから妹じゃないって!」
ポリュポンテースは二人を微笑みながら見守る。そうして、三人はアテネの門に着いた。
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