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「俺達が、初めて逢った日のこと。覚えているか?」
「あの日も雪だったこと。覚えてるよ」
「はしゃいで、転んでたよな」
「小さい頃から、バカだったんだよ私。今だって何を言って良いのかわからない。夢を叶えた君のことを応援しなきゃ、背中を押さなきゃ、って思っている癖に、訳のわからないことを言って、足を引っ張ろうとしている。引き留めようとしている。でもさ、そんなことをしたら最悪じゃない。一番醜い人間になる。それだけは、絶対に許すことができない。自分のためにも……、転んだままではいられない。心配しないで。もう、一人でも立ち上がることができるから」
「無理をしなくても、手を差し伸べるくらいのことはできるさ」
「それは、駄目。君が見るべき世界は、私の視界の世界ほど狭くはない。大丈夫。安心して、もう、二度と雪が降る場所には行かない。そうすれば、転ぶことはないから」
「この街に住んでいる限り、また、雪は降る。来年も、再来年も。季節は巡り続けるものだから」
「それでもっ」
「俺は、好きだよ雪。俺とお前を再会させてくれるさ」
「夢物語? そんなに、都合よく行くはずがないよ」
「五年。その間に一人前になって帰ってくる。お前を迎えに来る」
「なっ! 唐突に何を言ってるの? しかも、五年も待っていろって? こんなに可愛い私が放って置かれるとでも思ってる?」
「構わないさ。待っていなくても。だが、必ず戻ってくる。そうしたら、もう一度だけでいいから、一緒に雪を見ないか? 静かに降りしきる粉雪を。ハンバーガーでも食べながら」
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