さよならは、言わないよ

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配送のアルバイトも俳優のオーディションが続くから出れないと理由をつけて、仕事に行かない日々を過ごしていた。 オーディションにも不合格が続き、俺は不貞腐れている。 高校卒業して、何もない田舎が嫌で上京してきた。 夢や憧れを抱き、上京すれば派手な生活が出来るんじゃないか? 田舎と違い多くの人間が住む、ここ東京で暮らせばチャンスが転がり込んでくるんじゃないか? そんな甘い考えを、東京の現実が砕き壊した。 自分でもわかっている。 こんな日々は、長くは続かない事を。 金もなく、惰眠を貪る生活が続くはずがない。 いずれ柚希は、俺がそんな状態とわかれば俺を見限るだろう。 そして、母からは実家に戻ってこいと呼び戻されるだろう。 俺はただ、現実から逃げる日々を過ごしていた。
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