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転生は一度だけだと思っていた
魔族の本拠地、ロード城の大広間に転送魔法により到着。
数十体の魔族達が、王達の帰りを迎える為、待機していた。
「!?」
騒めく魔族達。
余りにも早すぎる帰還。
さらに、満身創痍の王、場違いの見ず知らずの人間という、衝撃的な光景を目にしたのだ。
無理もない。
「グルモ王、一体何が?」
年老いたゴブリンが、駆け寄る。
「不用意に近付くなバズ!この人間は強力な魔法を使用する!」
「何!?」
慌てて距離をとる、年老いたゴブリン、バズ。
「ガンダラ、ではまさかグルモ王を、そのようなお姿にしたのは?」
「あぁ、こいつだ」
刀を首に押し付けてくる。
「早急に、魔法解析班にこいつの能力を解析するように伝えろ」
「承知したガンダラ、念の為、死なない程度に強力な睡眠魔法をかけましょう」
「王、医務室の方へ」
数人の魔物がグルモを案内しようとする。
このまま、自分とグルモが引き離されるのはまずい。
実は王が、女性がとても苦手だという事実を知ったところで、部下達の忠誠心は揺るがないだろう。
王と部下の間に、信頼関係があるなら。
しかし、グルモとゼイ、ガンダラの関係性は余り良くないと思える。
対話を望む平和主義なグルモに比べて、好戦的なグルモ、ゼイ。
敵地に乗り込むという大事な場面で連れて行く、懐刀と言っても過言ではない二体でさえ、反発、命令拒否があったのだ、本当の意味でのグルモの味方は居ないのではないのか?
だとすれば、グルモに不利に働く、この能力特攻は隠しておいた方がいい。
グルモを失脚させると戦争が始まる気がする。
「ちょっと、待って欲しい」
「黙ってろ!」
激昂するガンダラ。
「王、グルモと一対一にしてくれないか?伝えたい事がある」
「あのなぁ人間、王の命を脅かす力を持った者を、二人きりする訳ないだろ?もっとマシな戦略を考えるんだな、早く睡眠魔法を」
「グルモ!頼む!あんたの為を思って言っている!」
「君は私の情けによって、生かされているという事を忘れるな」
突き放すグルモ。
「あんたを助けたいんだ!嘘じゃない!信じてくれ」
「命乞いは、その辺にしたらどうだ」
自分はグルモの為を思って、言っているのに。
こうも突き放す言い方をされると、流石にムッとくる。
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