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路地裏の奥には辛うじて何とか簡素な床と呼べなくもない代物があった。
無論、この街でも娼館以外の場所での売春行為は御法度である。だが実際はそうではなく、娼館に属さない花売娘が道端で春を鬻ぐ。
女は大きな方の花束を一つ、籠から取り出した。花を掻き分ける様にして中の蝋燭を探り出し、燐寸で火を灯す。
つまり、この蝋燭の芯が燃え尽きるまでが彼女の『営業時間』という訳だ。
女はゆっくりと木の板に布を敷いただけの床へと寝そべり、男を見上げた。
男がコートを脱ぎ、近くの木箱の上に置く。そうしてゆっくりと女へと近づいていく。
──手袋をしたままだなんて、よっぽどなのね
女は内心でくすりと笑う。そうして自らの手で服をはだけてみせた。
男の喉が鳴るのを女の耳が捉えた。
白い肌は女の自慢であった。この白い肌に男がどれだけ劣情を催すかを女は知っていた。髪留めを外し緩く頭を振れば、白い肌に黒い髪が流れた。
ひんやりとした皮手袋の感触と共に、首筋にちくんとした痛みを感じた。
──?
だがその痛みは微かであったし、すぐに消えた。少し首を傾げたものの、女は特に気にも止めなかった。
直後に感じた痛みの方が大きかった。
「……え……ぁ……?」
白い肌の下から迫り上る様にして出てくるモノ。
それは本来、白い肌の下にあるべきモノ。決して外に出てはならないモノ。
「……ぁ……ぁ……ゃ……」
きっちりと収まっていたはずのモノが、圧に押されて少しずつ出てくる。霧に湯気が溶けた。
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