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女は自分の臓物へと震える手を伸ばした。痛みのせいか、身体が痺れて思う様に動かない。それでも必死に手を伸ばした。
ぴちゃり。夜気に冷えた生温さと湿った感触。何とかして元に戻そうとする手が赤く染まる。
「ゃ……ゃぁ……」
白い手首を黒い手が掴んだ。
──何故、止めるの?
──早く、早く戻さなくちゃ
だが、がっしりと掴んだ黒い手がそれを許してはくれず、赤い指先だけが空を掻く。
そして女は見た。もう一つの黒い手を。その手にある銀色の光を。
──嫌、何をするの
──やめて。これ以上はもう嫌
だが黒い手は無情であった。非情であった。黒い手がゆっくりと降りていき、白い肌に銀色の光が沈んだ。
女の耳にプツリという音が届いた。プツプツと連続する音。連続する痛み。
更に開いた女の腹から臓物がまろび出る。新世界を求める求道者の如く。女の命を纏って。
──あぁ、あぁ
──だめ。出てはだめ
もはや声も出ず、はくはくと陸に打ち上がった魚の様に酸欠に喘ぐ事しか出来ない。
ずるり、と女の中が動いた。
黒い手が女の臓物を掴んで引いていた。
──あぁ、あぁ
黒い手が外れ、節くれだった手が見えた。男が手袋を外したのだ。そして、ぐちゅり、と濡れた音を立てて、手が女の中へと沈んだ。
──あぁ、あぁ、あぁ
ぐちゅぐちゅと女の中が掻き回される。言い様の無い違和感、異物感、嫌悪感。ぶるりと女の肌が震えた。
男が赤く染まった手を抜き、女の身体を跨いだ。
──何、を
聞くまでもなかった。男が赤く濡れた手で自分のスラックスのジッパーを下ろし、中から自身の雄を引き出したのが見えた。
──狂ってる
何の刺激も与えていないはずなのに、男の雄が隆々と頭を擡げているのを見て、女は震えた。
これから何が起きるのか。少なくとも女にとっては絶望しか齎さないだろう事だけは確かであった。
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