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「そう言えば聞いたことがある。人間の目は三つの点が三角形に並んでいるのを認識しただけで、それをまるで人の顔のように感じてしまうことがあるという。その能力は赤ん坊が母親をいち早く認識するための原始的な機能で、シュミラクラ現象と呼ばれると・・・・・・。これもシュミラクラ現象が作り出す、単なる目の錯覚なのだろうか?」
僕がその岩の表面に浮かんだ不思議な顔を眺めながらしばらく考えていた。そしてまたしても強烈な差し込みが、僕のお腹を襲ってきた。今までで一番強烈な奴だ!
ギュッルルルル
「ああ、ううぅ考えている暇はもう無い。僕は今すぐこのお腹の痛みに対して処置を施す必要があるのだ」
そして僕は便器の蓋を開けようと手をかけた。
しかし・・・・・・。
「何ぃ、あっ空かないだと!」
便器の蓋は便器にピッタリと張り付いたように空かないのだ。僕は便器の蓋に手をかけて一生懸命に張り付いた蓋を持ち上げようとした。しかし、便器の蓋はびくともせず、まるで便器自体がひとかたまりの便器をかたどった単なるオブジェであるかのように、まったく微動だにしないのだった。
「まさか、そんな? ここまで一緒に旅してきた僕をオマエは裏切るのか。この切羽詰まった状況で。嘘だ、嘘だと言ってくれ便器よ」
僕は必死になって便器の蓋をなんとしてでも開けようと頑張った。便器と便器の蓋の間に爪を立ててその間を少しでも拡張しようとガリガリと引っ掻いた。しかしどんなに頑張っても便器の蓋はびくともしないのだ。
グギュルルルルゥゥゥゥ
「あああああああ、もうダメだ!」
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