食いしん坊の君

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むしゃむしゃ むしゃむしゃ 今日も僕の前を歩く幼なじみのエリから、美味しそうな音が響く。小さな頃から……今もまだ幼いからそんな言い方をすると笑われるかもしれないけど、本当に物心つく前から彼女はこうだった。 いつでも僕の目の前で、何でも美味しそうに食べてしまう。産まれてから今もずっと、体が弱くて食が細い僕には羨ましかった。 エリのように食べられたら、美味しく感じてたくさん食べられて……もっと丈夫になれたんだろうか。なんて逆説的なことを考えてしまう時もある。 「美味しい!」 「良かったね」 ただ、こうも思う。僕の分まで彼女が美味しく食べてくれてるのかもしれない。だから、彼女が「美味しい」と喜べば、不思議と僕も嬉しくなった。 「ねぇオスカーもたまには一緒に食べようよ」 「僕はいいよ。ていうか、エリだって入院中なんだから食べ過ぎたらダメだよ」 「せっかく病院抜け出したんだから、今のうちに食べないと。またあの味気ない病院食に逆戻りだよ」 「僕はあれぐらいの方が食べやすいかな……」 「……一回くらい、オスカーと一緒に美味しいものお腹いっぱい食べたかったな」 「え……!?」 心臓が、いきなり大きく脈打った。 「だって……これが最後かもしれないんでしょ?」 「最後って、何で?」 鼓動が大きく、速く響く。この音が彼女に聞こえて、僕の動揺が伝わるのではないかと思うと、また加速していく。 いつの間にか、彼女の美味しそうな音が止み、彼女が静かに振り返った。どこか悲しそうな、寂しそうな笑みを湛えて。 「もうすぐ……お別れなんだよね」
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