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【 8 】
誰かに呼ばれたような気がして目が醒めた。
「起きた?」
ぼんやりした意識の向こう、嬉しそうに弾んだ声が飛び込んでくる。そうだ、疲れてんのに遠い街まで車運転させられて、しかも重労働を強いられたあとだ。疲れた。だから、もうちょっと眠っていいんだと思う。
「ねえ、また寝んの?」
拗ねた声はもう聞き慣れてしまった子守唄みたいなもので。けれども、決して心を許してはいけない相手だった。
「っ、――― !」
同じベッド、一つの布団で何度も寝た仲ではあるが、その存在感に慣れきってしまったせいで油断した。油断してはいけないことを思い出させてくれたのは、拗ねて不機嫌になった声だ。
「うっわ!びっくりしたぁ」
慌ててガバッ!と起き上がると、クリアになった視界に、濡れた髪で腰にバスタオルを巻いただけの格好の男が、目を真ん丸にして椅子に腰かけ固まっていた。
「超驚いた。すげーね、そんな一気に起きられんだ?」
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