いつかの春に続く冬

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 彼女の言うとおりだった。  待ち合わせ相手に出会えない。そんな最悪の事態を避けるために、少年は様々な策を講じたはずだった。  一人は、ネットに絵を投稿している作家の女性。  一人は、絵を通じて彼女を知りファンになった少年。  それは偶然の出会いだった。二人は長い時間をかけて互いを知り、仲良くなり、そして遂に今日、会う約束をした。顔を知らなくても出会えるよう、目印になるものを身につけて。  少年は、祖父の形見のライダーグラス。女性は、自作の絵をプリントしたスマホケース。  特に少年の目印はよく目立つ。簡単に見つけられるはずだった。  彼女が本当に、ここにいるのなら。
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