3人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………」
うつむいてしまった少年の肩を、少女は優しく叩いた。
「君も大変ねえ。薄情な奴に捕まっちゃってさ」
鞄をごそごそとあさり、ホットドッグをもう一つ取り出す。
「ほら。自分用に買っていたやつだけど、よかったら食べて」
「え?」
彼女とホットドッグとを交互に見る少年。
「……二つも食べるつもりだったの?」
少女の顔はみるみるケチャップ色になった。
「べ、別にいいでしょう。それだけおいしいの!」
「ありがとう。お代払うよ」
「いらない」
「でも。見ず知らずの人に、おごられるわけにはいかないから」
「なっ」
少女は不服そうに唇を歪めたが、ついと目をそらして値段を言った。
「これからどうするの」
手のひらで小銭を受け止めながらも、視線は合わせようとしない。
「もう諦めたら? こんなに待って現れないんだもの。きっと来ないよ」
「それは」
「会う価値もないと思う。どうせ勝手に興味なくして、勝手にやめちゃったに決まっている」
「んー」
頬をかいて、少年は困ったような笑みを浮かべた。
「そうだね。今日はもう帰ろうかな」
「そう。……うん、そうね」
頷く少女。さんざ自分の方から勧めたくせに、その表情はどこか冴えなかった。
「その方がいいよ。すてきな作家なんて他にも沢山いるんだし、女の子だって」
「いや」
踵を返し歩きかけていた少年は、しかし足を止めて振り返った。
「そうじゃなくて」
最初のコメントを投稿しよう!