いつかの春に続く冬

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「…………」  うつむいてしまった少年の肩を、少女は優しく叩いた。 「君も大変ねえ。薄情な奴に捕まっちゃってさ」  鞄をごそごそとあさり、ホットドッグをもう一つ取り出す。 「ほら。自分用に買っていたやつだけど、よかったら食べて」 「え?」  彼女とホットドッグとを交互に見る少年。 「……二つも食べるつもりだったの?」  少女の顔はみるみるケチャップ色になった。 「べ、別にいいでしょう。それだけおいしいの!」 「ありがとう。お代払うよ」 「いらない」 「でも。見ず知らずの人に、おごられるわけにはいかないから」 「なっ」  少女は不服そうに唇を歪めたが、ついと目をそらして値段を言った。 「これからどうするの」  手のひらで小銭を受け止めながらも、視線は合わせようとしない。 「もう諦めたら? こんなに待って現れないんだもの。きっと来ないよ」 「それは」 「会う価値もないと思う。どうせ勝手に興味なくして、勝手にやめちゃったに決まっている」 「んー」  頬をかいて、少年は困ったような笑みを浮かべた。 「そうだね。今日はもう帰ろうかな」 「そう。……うん、そうね」  頷く少女。さんざ自分の方から勧めたくせに、その表情はどこか冴えなかった。 「その方がいいよ。すてきな作家なんて他にも沢山いるんだし、女の子だって」 「いや」  踵を返し歩きかけていた少年は、しかし足を止めて振り返った。 「そうじゃなくて」
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