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「まあ、あっちも気づいてなかったみたいだし? 私なんてイメージ外だったんでしょ。無駄に落胆させなくて正解、正解」
それとも。
スマホをなぞる指をふと止めて、首をかしげる。
本当は、気づいていたのだろうか。
『すみません。人と待ち合わせしているんですけど』
そう話しかけてきた、あの時から?
『今日「は」やめておくだけだよ。またネットではいつも通りに声かけようと思うし。それでも避けられたら、さすがに考えるけど』
『え?』
少女には全く想定外の返答だった。だってこの一瞬で、全て終わりだと思っていたから。
だが。わざわざ振り向いて、足を止めて、彼は確かにそう言った。
『次が、あるの?』
彼は破顔して答えた。
『もちろん』
アプリを開く。少年からのメッセージを見つけて、彼女は顔をくしゃくしゃにした。
「次、か」
その『次』はいつか来るのだろうか。それはわからないけれど。
少女の胸の中には温かいものが満ちていた。
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