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いつかの春に続く冬
「へえ、じゃあすっぽかされちゃったんだ」
「まだそうと決まったわけじゃないだろ!」
少女の心ない言葉に、少年は大声で言い返した。
彼女が発した『感想』は、きっと少年が何度も胸の内で反芻した『可能性』そのものだっただろう。それなのに。
発せられたその言葉は、少年の想定していた以上に破壊力を持っていたらしかった。
「いやいや、もう決定的でしょ」
ケチャップがたっぷりついた口を大きく歪ませ、目の前の少女はそう決めつけた。
「もう一時間経つんでしょう? 無理無理、もう来ないって」
「ば、場所がわからなくて迷っているのかも」
「向こうから待ち合わせ場所を指定してきたのに?」
「どうしても避けられない予定が入ったとか」
「連絡もなしに?」
「……ぼくが待ち合わせ相手だって、わからない可能性も」
食い下がる少年。少女はこれみよがしに大きなため息をついた。
「そのために目印を決めたんじゃん。そうなんでしょう?」
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