こだわりの条件

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 驚きの感情を抱きながら周りを見渡していると、商店街で見かけた人影が目に入った。しかし、その人影をよく見てみると人間ではないような雰囲気を感じた。全身を覆う緑色の布のようなものは風が全く吹いていないにもかかわらず、ゆらゆらと揺れ、髪はなく真ん丸の目と異常にとがった鼻、おちょぼ口という風貌だった。ユウイチがその得体のしれない物体をまじまじと見ていると、物体のほうから話しかけてきた。 「こんばんは。人間さん。私は妖精です。」  ユウイチは急にしゃべりだした物体におもわず「あっ」と声をあげた。相手に敵意は感じないものの人間ではない物体と対峙したことなどないため腰が抜けそうだった。 「驚くのも無理ありませんよね。我々の種族の妖精は初めて人間の世界にやってきたのですから。少し人間の世界を偵察に行って、こちらの世界に帰ってきたところでした。私はおっちょこちょいで、つい人間界との境を閉ざすのを忘れておりました。」  ユウイチは、目の前で起こっている出来事に呆然としていた。それでもなお妖精は話し続けた。 「ちょうどよかった。私の初めてのお客さんになってくださいませんか?私は人間を幸せにするのが仕事なのです。」  ユウイチは何のことかまったく見当がつかず、恐る恐る質問をした。 「お客さんになるとか、幸せにするとか、いったいどういう意味なのですか?」 「簡単に言うと、あなたが望む人物をあなたの住む世界から探し出し、その人とあなたの未来を結びつけることができます。」  妖精は端的に説明をした。
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