第35話(2)

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「男受けもいいですよ」  秦から意味ありげな流し目を寄越され、和彦は返事に詰まる。当て擦り――ではなさそうだと判断し、恐る恐る確認してみた。 「やっぱり、心当たりでもあるんじゃないか?」 「わたしの口からはなんとも。今度、先生から中嶋に聞いてみてください」 「……なんだか面倒なことに巻き込まれそうな予感がするから、遠慮しておく」 「先生は慎重だ」  秦が顔を綻ばせ、少なくともその姿からは、中嶋との関係を深刻に悩んでいる様子はうかがえない。どうやら和彦が心配する事態ではないようだ。 「まあ、ぼくなんかが心配しなくても、君ら二人のほうがよほど、修羅場には慣れているか」  和彦の言葉に、秦が芝居がかった仕種であごに手をやり、深刻な表情を見せる。 「他の人ならともかく、先生にそう言われると、複雑な気持ちになりますね……」 「悪かったよっ。余計なことを言って」  失礼なことに秦は声を上げて笑い、自覚はあるだけに怒るに怒れない和彦は立ち上がると、雑貨で埋まっている棚へと歩み寄る。気晴らしのためにここを訪れたので、何か買って帰るつもりだ。     
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