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総和会本部の和彦のために準備したという新しい部屋は、必要なものはすべて揃ってはいるのだが、やはりまだ居心地が悪く、せめて自分が選んだ小物でも置いてみようと考えたのだ。それに、クリニックが休みの日にわざわざ外出しておきながら、手ぶらで帰るのも気が引ける。
「何かお探しのものでもありますか?」
「マグカップが。あっ、それと、温度計が欲しい。湿度もわかるものがいいな」
「マグカップなら、ちょうど入荷したばかりのものがいくつかありますから、今出しますね。温度計は、そこの棚に並んでいるものが全部です」
わざわざそこまでしなくてもと言おうとしたが、やけに様になるウィンクを残して秦の姿が店の奥へと消える。待っている間、突っ立っているのも手持ち無沙汰なので、和彦は棚を覗いて温度計を探し始める。
ついつい目移りしてしまい、あれこれと商品を手に取っていると、店のドアが開閉する音がした。ドアに貼ってあった臨時休業の紙に気づかないということはありえないので、店の手伝いに誰か来たのだろうかと思い、和彦は棚の隙間から様子をうかがう。
慌しさを感じさせる足音が、棚の向こう側を行き来する。顔がよく見えないので、腰を屈めようとしたとき、来訪者に気づいたらしく秦が声を発した。
「おや、意外なお客様ですね。もしかして、雑貨を買いに来られたんですか?」
「――……そんなわけあるか」
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