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鷹津という男に何かが起こったのは確かだが、和彦には推測することすらできない。もどかしいし、水族館に引っ張り込まれるまでは、腹立たしさすら覚えていたが、それはもう消え失せた。
鷹津と〈デート〉をしているという現実に、気恥ずかしさのほうが上回ったのだ。
「なあ、どうして水族館なんだ」
「遊園地のほうがよかったか?」
和彦は動かしていた爪先をピタリと止めて、思わず隣を見る。鷹津は、到底楽しんでいるとは思えない顔で、水槽を眺めていた。
「そうだと言ったら、連れて行ってくれたのか?」
「俺と一緒で楽しめるならな」
「……今は、楽しんでいるように見えるか?」
横目で和彦を一瞥した鷹津が、ようやく唇を緩める。
「あまり深く考えるな。晩メシまでの時間潰しだ」
「服を買ってくれたのも?」
「俺と一緒にいるのに、総和会の匂いが染み付いているものを身につけているのが、気に食わなかったんだ」
そのせいで、着替えた服はコインロッカーに押し込まれてしまった。
鷹津の言葉に、和彦は表情を曇らせる。
「なあ……、あんた本当に――」
これからどうするつもりかと言いかけたが、言葉は口中で消える。代わりに、別の質問をぶつけていた。
「水族館を出たら、次はどこに行くんだ」
「希望はあるか?」
「あんたなりのデートプランがあるんじゃないのか」
「……ねーよ、そんなもの」
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