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吐き捨てるように答える鷹津がおもしろくて、和彦は顔を伏せて必死に笑いを噛み殺す。本来であれば切迫した状況なのだが、自分でもどうしてこんなにのんびりしていられるのか不思議だった。
缶コーヒーを飲み干してから、二人は再び水槽で泳ぐ魚を見て歩く。
「そういえば、いままであんたの趣味を聞いたことがなかった。なんなら、あんたの趣味に関係するような場所に行ってもいいけど」
こじんまりとした水槽の底で、砂に埋もれるようにして身を潜めている魚を眺めながら、和彦は問いかける。ガラスには、背後に立つ鷹津の姿が反射して映っていた。自分から水族館に入っておきながら、魚にはまったく興味がない様子の鷹津は、むしろ、魚を眺める和彦のことを興味深そうに観察している。今も、ガラス越しに和彦を見つめていた。
「会えば、陰険な会話を交わすか、セックスしかしてないからな、俺たちは」
明け透けな鷹津の発言に、後ろ足で蹴りつけてやろうかと本気で思う。そうしなかったのは、すぐ側を家族連れが通り過ぎたからだ。
「悪かった。変なことを聞いて。いい歳をして趣味の一つもないからといって、別に引け目は感じなくていいから――」
「若い頃は、登山をしていた」
鷹津からの意外な答えに、和彦は振り返る。
「誰が?」
「……お前、俺の趣味を聞いたんじゃないのか」
さっさと行くぞと言いたげに鷹津が背を向けたので、再び歩き始める。
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