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どうすればいい、と自問したところで、浴室のガラス戸が開閉される音がする。背後に気配を感じたときにはきつく抱き締められ、ジンと胸の奥が疼く。
腰から脇腹にかけて撫で上げられながら、うなじをそっと吸い上げられる。背後から押し当てられた欲望は、すでにもう熱く高ぶっていた。
「――早く抱かせろ」
水音に紛れ込ませるように、鷹津が掠れた声で耳元に囁いてくる。再び和彦の胸の奥が疼く。
「まだ体を洗ってない……」
「俺が洗ってやる」
両てのひらが胸元や肩に這わされ、さらに両足の間をまさぐろうとしてきたため、声を洩らして小さく身を捩ったところで、いきなり体の向きを変えられる。シャワーの湯が降り注ぐ中、間近から鷹津の顔を見つめる。
ここで初めて、いつもはドロドロとした感情の澱が透けて見える目が、今日は皮肉を言いながらも、優しい光をずっと湛えていたことに気づく。もっとも今は、煮え滾るような欲情を湛えているが。
鷹津の手が頬にかかり、さらに顔が近づいてくる。急に息苦しさを覚えた和彦は顔を背けようとしたが、その前に唇が重なってきた。上唇を吸われて声を洩らす。下唇には軽く噛みつかれて、足元が乱れる。和彦は咄嗟に鷹津の腕に手をかけ、次の瞬間には激しい口づけを交わしていた。
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