第35話(2)

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 唇を貪り合い、差し出した舌を浅ましく絡めていく。交わす唾液が、降り注ぐ湯であっという間に流されてしまう。それを疎ましく思ったのは和彦だけではなかったようで、鷹津が片手を伸ばし、シャワーヘッドの向きを変えた。  力強い両腕できつく抱き締められて、猛々しい抱擁の心地よさに眩暈がする。腰が密着し、よりはっきりと鷹津の欲望を感じることができる。  和彦は片手を取られて下肢へと導かれる。鷹津に言われる前に、自分から熱くなった欲望に手を這わせると、唇に鷹津の洩らした吐息がかかった。引き寄せられるように唇を吸い合い、口腔に鷹津の舌を受け入れる。歯列を舌先でくすぐられ、感じやすい粘膜をまさぐられながら、和彦は握り締めた欲望をゆっくりと扱き始める。  手の中でますます硬さと大きさを増す欲望の変化に、静かな喜びを覚えていた。鷹津は、自分を求めて興奮し、こんなささやかな愛撫でも感じてくれているのだ。  和彦が身を任せきったタイミングで、鷹津が低い声で言った。 「――舐めてくれ、和彦」  和彦が伏せていた視線を上げると、目元に唇が押し当てられる。もう一度唇を吸い合ってから、鷹津が壁にもたれかかり、和彦はタイルに膝をついた。     
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