第35話(3)

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 そう言って鷹津が立ち上がり、テーブルへと歩み寄る。和彦は再び寝返りを打って仰向けとなったが、その拍子に内奥で蠢く感触があってドキリとする。腰から下にはシーツがかかっているが、見なくても、自分の下肢がどういう状態になっているのかわかった。  ベッドに戻ってきた鷹津は、ワインが注がれたグラスを持っていた。 「……あんたにしては気が利いている」  和彦の言葉に、鷹津は鼻先で笑った。 「俺はいつでも、お前に甲斐甲斐しく尽くしているだろ」 「そうだったか?」  片手を掴んで鷹津に引っ張り起こしてもらうと、受け取ったグラスに口をつける。本当はただの水のほうがありがたかったのだが、せっかく鷹津が頼んでくれたのだから文句はなかった。一気に飲み干すと、鷹津がニヤニヤと笑う。 「ボトルでラッパ飲みしそうな勢いだな」 「だから、喉が渇いてるんだ」  鷹津はワイン瓶ごと持ってきて、恭しい動作でグラスに新たにワインを注いでくれた。  ようやく喉の渇きが治まって大きく息を吐き出すと、鷹津にグラスを取り上げられてベッドに押し倒される。腰を覆っていたシーツを剥ぎ取られ、両足の間に腰が割り込まされた。  見つめ合いながら和彦は、鷹津の頬にてのひらを押し当てる。いまさらながら、まどろむ前に鷹津と交わしたやり取りが、切迫感を伴って和彦の胸を苦しくさせる。 「――……あれは、あんたなりの冗談なのか?」 「あれ?」 「俺と一緒に逃げるか、って……」     
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