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「お前としては、本気と冗談、どっちのつもりで頷いたんだ」
和彦は答えに困る。快感に酔わされた状態で決断を迫られても、まともな思考力は働かない。しかし、鷹津はあえてそれを狙って、和彦から返事をもぎ取ったのだ。
和彦は顔を背け、さらに鷹津に問いかけた。
「あんたこそ、どっちなんだ?」
「俺は――本気だ。惚れた相手が、性質の悪い連中に囲われているんだ。なんとしても連れて逃げたいと思うのは、恋する男としては必然だろ」
思いがけないことを言われて、和彦は顔を背けたまま目を見開く。するとあごを掴まれ、正面を向かされた。声を発する前に唇を塞がれ、口腔に舌が押し込まれる。情欲はもう完全に冷めたはずなのに、冷たい舌に口腔をまさぐられているうちに、体の内でポッと小さな火が灯っていた。
和彦は口づけの合間に、鷹津の真意を確かめようとする。
「待っ……、今の言葉、本気で――」
鷹津はわざと聞こえないふりをしているのか、和彦の唇を甘噛みする一方で、着込んでいるバスローブの紐を解き、ぐっと腰を密着させてくる。信じられないことに、鷹津の欲望は熱くなっていた。
「なん、で……」
「俺がお前に欲情すると、おかしいか?」
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