第36話(2)

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「……父さんが偉そうに言うなよ。御堂さんに迷惑かけたことは事実なんだから」  目の前の伊勢崎父子のやり取りを、微笑ましさと困惑が入り混じった気持ちで眺める。  とりあえず座って話そうということで、わざわざ少人数用の客室を用意してもらい、庭から場所を移動したのだが、なぜか和彦も同席している。遠慮しようとしたのだが、龍造の押しの強さに逆らえなかった。 「夜遅くになって御堂さんの家に押しかけて、連休の間、俺だけ泊まらせるよう無理を言ったあと、自分はさっさと飲みに行って。俺は申し訳なくて、朝早くに家を出たんだぞ」 「あー、だから今朝はいなかったのか……」  今の玲の話からすると、もしかすると御堂は、和彦と玲が顔を合わせたことを知らなかったのかもしれない。だとしたら、夜更けの訪問客について、あえて和彦に説明しなかったのも理解できる。  和彦が安定剤で眠り込んでいる間に、あの家ではちょっとした騒動が起こっていたのだなと思うと、少々申し訳ない気持ちになる。 「父と御堂さんは昔馴染みなのかもしれないけど、俺は昨夜が初対面だったんで。さすがに、朝メシまで食わせてもらうのは図々しいと思ったんです」     
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