第37話(1)

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「どうやら、この間の襲撃のショックは回復できたようだな、先生。それともその無防備さは、俺たちの護衛に対する信頼の表れか?」  嫌なことを思い出し、和彦はそっと眉をひそめる。車で襲撃を受けた衝撃はもちろん忘れたわけではないが、その襲撃を仕掛けたのが守光ではないかという、御堂から注ぎ込まれた〈毒〉がまっさきに蘇ったのだ。  守光の計画を、南郷が把握していないはずもなく――。  和彦は不信感を込めて、南郷の大きな後ろ姿を凝視する。すると、唐突に南郷が切り出した。 「第一遊撃隊隊長の家ではゆっくりできたか、先生?」 「えっ、あっ……、はい。ずいぶんよくしていただきました。清道会の綾瀬さんにも」  口にしたあとで、綾瀬の名を出してよかったのだろうかと思ったが、そもそも清道会会長の祝いの席に呼ばれたのだ。なんらおかしくはない。 「清道会としては、願ったり叶ったりだろうな。あんたが襲撃された件で疑いがかかって、居心地が悪い思いをしていたところに、そのあんたが来てくれたんだ。――長嶺組長は度量が大きい。俺なら怖くて、家に閉じ込めて一歩も外に出さない」 「……ぼくには、よくわかりません。組の事情も、組の上の人たちが何を考えているかも。今回はただ、連休でのんびり過ごしていただけです。それ以外のことは何も……」     
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