第37話(1)

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「とりあえず隊の人間を張り込ませて、出席者の顔をビデオで撮らせてはおいた。このことは、向こうも察しているだろうし、見せつけてもいたはずだ。うちは後ろ暗いところはないが、いざとなれば、手段を選ばない、ってな」 「それは――」  南郷の口元に意味ありげな笑みが浮かび、和彦は身構える。 「御堂の昔の男が来ていただろ。清道会の組長補佐じゃないぜ。他所から来ていた男のほうだ」  南郷が、御堂の過去を露骨に口にするのは、そうすることで辱めているつもりなのだろうか。ふと、そんなことを考えたあと、嫌な男だと、和彦は心の中で呟いておく。 「――……伊勢崎さんには、お会いしました」 「今は伊勢崎組を率いているんだったな。俺自身は、本人と顔を合わせたことはないんだが。なかなかのやり手だそうだ。組自体はそう大きくはないが、何しろシンパが多いらしい。今じゃ、北辰連合会では欠かせない男だとまで言われている」 「詳しいんですね」  和彦の言葉に、南郷が派手な笑い声を上げる。 「総和会で隊を任されている身だからな。情報収集も仕事の一つだ」 「だったら、全国の組の情報をすべて把握しているんですか?」 「いや、そこまでは。気になるところだけ、だな」     
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