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和彦は昨日知ったばかりの、伊勢崎組――というより龍造の動向が頭に浮かんだが、南郷に報告するつもりは一切なかった。情報収集が仕事だというのなら、いずれ南郷の耳に入るだろうし、もしかするとすでに把握しているのかもしれない。
心情としては、御堂の立場が悪くなるようなことはしたくなかったのだ。
余計なことは言うまいと心に誓った次の瞬間、南郷に問われた。
「先生の、伊勢崎龍造の印象を聞いてみたいな」
「印象ですか……。気さくな方でした」
「他には?」
「……いい父親という感じでした。息子さんをずいぶん可愛がっている様子で」
どういう意味か、南郷は軽く鼻を鳴らした。
「南郷さん?」
「極道も人の子。やっぱり血の繋がった我が子は、何より可愛くてたまらないんだろうな。……今のところ、これはあんたの子だと訴えてくる女もいない、独り者の俺には到底わからない感覚だ」
南郷の脳裏に浮かんでいるのは、伊勢崎父子のことだけではないだろう。
踏み込んではいけない南郷の闇に触れてしまったような気がして、和彦はブルッと身を震わせた。
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