8799人が本棚に入れています
本棚に追加
和彦は短く息を吐き出すと、賢吾の挑発に乗った。
「――あんたが言ったんだ。遊びは許す、と」
「これまでの経験で、さんざん骨身に染みたと思ったんだがな。ヤクザの言うことを信用するなってことは」
和彦自身、玲に言ったことだ。なんとか不安や怯えを表情に出すまいと踏ん張っていたが、この瞬間、すがるように賢吾を見つめてしまう。
賢吾が首筋に顔を寄せ、じわじわと歯を立ててきた。このまま皮膚どころか肉まで食い千切られるのではないかと、硬い歯の感触に怖気立ったが、同時に和彦の胸の奥で熱いものがうねった。この行為が、賢吾の強い執着心を表していると、よくわかっているからだ。
「賢吾……」
思わず呼びかけると、首筋をベロリと舐め上げられる。
「本当に、性質の悪いオンナだ。浮気を許可してすぐに、相手を見つけ出して、咥え込んで。どうせ、相手の男も骨抜きにしたんだろ」
誰だ、と低い声で問われる。物騒な響きを帯びたバリトンに、甘い眩暈に襲われる。そこでまた、首筋を舐め上げられる。
「……わかって、るんだろ……」
「お前の口から聞きたい。どんな男に抱かれたか」
最初のコメントを投稿しよう!