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「当たり前だ。嫌なんて言わせるか」
「……だったら、聞かなくてもいいじゃないか」
「でも聞きたいんだ。お前の口から」
自分はこの男から強く求められているのだと実感していた。他の男と体を重ねることを許しながら、和彦がその男に心を奪われることを、絶対に許さない。体はいい。心だけは独占させろと、傲慢に主張しているようなものだ。
こんな男が、声だけとはいえ、和彦が父親と接触したと知れば、どんな行動に出るか――。
和彦が何より恐れるのは、賢吾が作る堅牢な檻に閉じ込められることよりも、俊哉によってその檻から連れ出されることだ。賢吾がみすみす許すとは思えなかった。
「ぼくは――」
賢吾の頭を引き寄せて、和彦は耳元で囁いた。
もちろん、賢吾が望んでいる言葉を。
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