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和彦はすでに、里見に甘やかされていた子供ではない。大人となり、里見以外の男たちと関係を持つという経験を経てきたのだ。昔と同じような目で見てほしいとは、口が裂けても言えない。
里見は、かつての和彦との関係を話した対価として、俊哉から一体どれだけの事情を聞かされたのだろうかと、自虐的に和彦は想像する。
軽蔑の眼差しを向け、罵ってもいいはずなのに、それでも里見は、会いたかったと言ってくれた。嬉しさよりも、ただ胸が苦しくなってくる。
「……父さんから、全部聞いたんだろう? 里見さんを、これ以上巻き込みたくないんだ。すぐ近くに、ぼくの見張りが……、ヤクザがいるんだ。目をつけられたら、厄介なことになる」
「気にしてないし、平気だ」
「気にしてよっ」
再び声を荒らげてから、襖の向こうの俊哉を気にかける。
「覚悟は決めている。――君のお父さんから、協力してほしいと言われたときから」
里見は慎重に言葉を選ぶように、眉をひそめて考える素振りを見せてから、和彦の耳元に顔を寄せてきた。髪と耳朶に触れる柔らかな息遣いに、条件反射のようにドキリとしてしまう。
「嬉しくもあったんだ。君と会える理由ができたことに」
「里見さん……」
「ひどい男だろう? 君が大変な目に遭っているというのに、こんなことを思うなんて」
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