第34話(4)

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第34話(4)

 和彦は四日間、ホテルを転々とする生活を送った。クリニックから出て護衛の車に乗り込むと、その日宿泊するホテルに連れて行かれるという具合だ。  何も教えられないまま、ホテルの部屋で一人で過ごしていると、あれこれと考え込んでしまい、気が滅入りそうになったが、和彦の性質をよく理解している身近な男たちによって救われた。千尋が毎日電話をくれたうえに、中嶋も、ホテル内でとはいえ夕食につき合ってくれたのだ。  そして五日目に、仕事を終えた和彦が車に乗り込むと、総和会本部に戻れることになったと告げられた。  さすがに、車がぶつかってきた現場を通過するときは緊張したが、特に問題が起こることなく、和彦の身は安全に総和会本部へと送り届けられた。  すでに連絡を受けていたらしく、照明で明るく照らされている駐車場には、吾川が待機していた。  九月に入ったとはいえ、夕方でもまだ蒸し暑い中、わざわざ外で自分を待つ必要などないのにと、和彦は心の内で思う。いまだに総和会で恭しく扱われることには慣れない。  車を降りた和彦に対して、さっそく吾川は穏やかに微笑みかけてきた。 「お疲れになったでしょう」     
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