第35話(3)

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第35話(3)

 寝返りをうった拍子に、前触れもなく目が覚めた。和彦はぼんやりとした意識のまま、ここはどこだろうかと考えていたが、すぐに状況を思い出す。  伏せていた視線を上げると、ベッドの端に鷹津が腰掛けていた。向けられた背は真っ白のバスローブに包まれているが、普段の格好を知っているだけに、鷹津という男に白は似合わないなと、失礼なことを考えていた。そんな自分に気づき、和彦は唇を綻ばせる。 「――……寝ないのか?」  和彦が声をかけると、鷹津がゆっくりと振り返る。手には、缶ビールを持っている。 「まだ、宵の口だ」  時間の感覚が麻痺しており、和彦は瞬きを数回繰り返す。熟睡したような気もするが、ほんのわずかな間、ウトウトしていただけのような気もする。激しい情交に加え、昼間歩き回ったせいもあって、とにかく体はドロドロに疲れきっていた。  ただ、それは苦痛ではなく、どちらかといえば心地よさに近い。頭の先から爪先まで、鷹津に注がれた情愛に満たされているようだ。 「喉、渇いた……」  和彦はのろのろと手を伸ばし、鷹津から缶を受け取ろうとしたが、スッと躱される。 「お前にはルームサービスを頼んでおいた」     
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