第36話(2)

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第36話(2)

 御堂の実家に幽霊など出ないとはっきりしたことは、ささやかながら和彦を安堵させた。心の底から存在を信じているわけではないが、得体の知れない人物が夜、建物の中をうろついていたというのは、気持ちがいいものではないのだ。 「――……つまり、昨夜、ぼくを助けてくれたのは、やっぱり君だったのか」  和彦の言葉に、伊勢崎玲は微妙な表情となる。 「助けた、というのは大げさです。ただ部屋に連れて行って、水を飲ませただけですから」 「でも、君が見つけてくれなかったら、ぼくは廊下で朝まで寝ていたことになる」  ここで短く笑い声を洩らしたのは、玲の父親である伊勢崎龍造(りゅうぞう)だ。さきほど名刺をもらったが、そこには、北辰(ほくしん)連合会顧問という肩書きとともに、伊勢崎組組長とも記してあった。  これまでさまざまな組織の名を目にしてきた和彦だが、北辰連合会と伊勢崎組という組織に関する知識は、まったくなかった。おそらく総和会と直接関わりがある組織ではない。 「秋慈には心底迷惑そうな顔をされたが、お前をあの家に泊まらせておいてよかったな。立派な人助けができたじゃねーか、玲」     
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