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第40話(1)
呼出し音が途切れてまず和彦の耳に届いたのは、非難がましいため息だった。そんなものを聞かされて平静でいられるほど、人間ができていない和彦は、反射的に電話を切りたくなった。
もともと大してあるわけではない勇気を、これでも振り絞って電話をかけたのだ。自分の兄――英俊に。
「……都合が悪いなら、かけ直すけど」
控えめに提案すると、再びため息が返ってくる。いつになく英俊の機嫌は悪いようだが、そもそも自分の前でよかったことなどなかったなと、自虐でもなんでもなく、淡々と和彦は思う。
「携帯に着信が残っていたから、気になったんだ。用がないなら、別に――」
『父さんから聞いた。……昨日』
一瞬、意味がわからなかったが、英俊の声から滲み出る静かな怒りで察しがついた。
今度は和彦がため息をつく番で、書斎のイスに深く腰掛けると、視線を天井に向ける。素早く計算したのは、俊哉と対面してから昨日までの日数だった。
「昨日……」
『そうだ。昨日まで、秘密にされていた』
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