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第40話(2)
昼過ぎに自宅マンションに戻った和彦は、抱え持った袋をダイニングのテーブルに置き、ほうっ、と息を吐く。
昨日は、賢吾の誕生日を祝うはずが、その賢吾に靴を買ってもらい、さらには家具店で見かけたルームランプを、和彦の意見も聞かずに注文してしまった。明日には組員の手によって、寝室に運び込まれているだろう。
自分の誕生日ではないかと錯覚しそうなほど至れり尽くせりだったが、和彦だけでなく賢吾も楽しんでいるように見え、抗議など野暮なことができるはずもなかった。そう、とにかく楽しかったのだ。
もらうばかりでは申し訳ないと、和彦もささやかながら何か買ってプレゼントしたいと提案したものの、賢吾が首を横に振り続けた。
デートができただけで十分だと殊勝なことを口にしていたが、そのときすでに賢吾の中に企みはあったのかもしれない。
結果として和彦は、賢吾にきちんと誕生日プレゼントを渡せた――というより、奪われた。
「……バカじゃないか、いい歳した男の〈初めて〉なんて」
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