第40話(4)

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第40話(4)

 俊哉と再び対面することが決まったからといって、特別な変化が起こるでもなく、いつものようにクリニックで過ごす月曜日は始まった。 「……うーん」  診察室のイスに深くもたれかかって、一声唸った和彦はこめかみを押さえる。前夜、中嶋の愚痴につき合ったあと、自宅マンションに帰宅した和彦だが、今度は一人で深酒をしてしまったのだ。おかげで、朝から頭痛がする。  次の予約まで時間があるため、紅茶を飲みながらのんびりしているが、頭の中ではめまぐるしく懸念事項が駆け巡っていた。この辺りも頭痛と関係しているのだろう。  和彦は深いため息をつくと、デスク上の卓上カレンダーを手に取る。週末まであっという間だと思ったあと、十一月ももうすぐ終わることに気づかされる。今年最後の月が巡ってくるということに、ささやかな感慨に耽っていた。  そこでふと、去年の今頃、自分はどうしていたのだろうかと思い返す。男たちの事情に振り回されてはいたが、それでも比較的穏やかな日々を送っていた。守光とはまだ顔も合わせたことはなく、鷹津は相変わらず嫌な男ではあったが、なんとなく接し方がわかりかけていた頃で――。 「佐伯先生」     
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