第3話 僕とカレー《真実編》

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 ?  その瞬間、堰を切ったようにあの日の光景が脳裏に次々と映し出された。襲いかかってくる不良の怒声。立ち向かう富田。暗闇の中に横たわる、彼の姿。どくん、どくんと心臓の音が耳に響く。不安が、押し寄せる。  富田が、死んでしまう。  それからは自然と体が動いていた。助けなきゃ、助けなきゃ。そればかりが頭の中をぐるぐると回って、無我夢中で彼らに迫って、不良を周りから振り払った。不良たちは最初は狼狽えていたものの、すぐに苛立った表情を露にし、僕を睨んできた。上から下まで睨め回した後、唸るような低い声でつぶやく。 「なんだテメェ?」  三人同時に詰め寄られて、冷や汗が止まらなくなる。 「怪我したくなかったらさっさと失せろ」  その言葉にあの日の光景がリンクする。視界が暗くなり、痛みが、恐怖が体を蝕んでいった。膝が笑い、足がすくむ。だが、負けてはいけない。今度こそ、今度こそ! グッと拳を握りしめ、全身に力を入れた。 「わかった。まずお前から始末してやるよ」  そう言った次の瞬間、重い拳が頬を直撃する。勢いで吹っ飛ばされ、地面に倒れた。視界にノイズが走り、不良の後ろが完全な夜の闇に変わる。 「ほら、立てよ」  不良の一人が髪を鷲掴みにして、僕を無理やり立ち上がらせた。そして、頬を思い切りぶん殴られ、また地面に転がった。目の前に数本の髪の毛がゆっくりと落ちてくる。地面に真っ赤な液体が零れる。追い打ちをかけるように四方から足が飛んできた。腹や背中に鈍い痛みが広がっていく。地獄の時間が長く続く。顔面を汚い靴底が舐めるように這っていった。大量に血が地面に落ちた。鼻が焼けるように熱い。恐怖に身が固くなる。それでも容赦なく襟首を掴まれ、立ち上がらせる。
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