第2話 カレーと僕《過去編》

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 いつものように自分の席に座って一人昼食を取ろうと弁当箱を開けると、その中にはカレーと白米がちょうど半分綺麗に詰められていた。前日の夕食がカレーの日に母さんがよくやる手だ。その思いきりの良さにある意味清々しさを感じながらも、僕はいつものようにちょうど半分の切れ目のところにスプーンを入れる。すると、ふいに頭上から声が降ってきた。 「わっ! カレーだ!」  見上げると、富田が僕の弁当箱を見て目を輝かせていた。彼は机に前のめりに寄りかかってきて、「すげー!うまそー!」と言いながら、弁当箱の中のカレーを見つめている。羨ましそうな目でカレーを食い入るように見つめる姿に居たたまれなくなって、スプーンを差し出しながら告げる。 「た、食べる?」  すると、富田の表情はぱぁっと明るくなり、「サンキュー」と軽く言って、スプーンを受け取る。彼はそのまま一口分のカレーを掬い上げ、スプーンにパクッと食いついた。 「ん~! めっちゃうまい!」  富田はそのあと2、3口頬張って、ご機嫌にスプーンを返してきた。 「お前ん家のカレーうまいな! またカレーの時、食わしてよ」  富田はニカッと笑って言うと、またグループの輪の中に戻っていった。唐突に現れて颯爽と去っていった彼の姿を呆然と見届ける。自分で作ったわけでもないカレーを褒められただけなのに、その時僕はなぜだか嬉しい気持ちでいっぱいになって、残ったカレーを夢中で頬張った。
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