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王子は俯いて動かない。アスクは「そんな風に言われて殺せるわけが…。」と反論しようとするが、王子が腕をアスクの前に出し、それをとめる。アスクは渋々口を閉じる。
「…レント、剣を僕に。」
「…!…いいのか?」
サイレントは王子を真っ直ぐ見て問う。王子は俯いたまま、小さく頷く。
「…この者は生きていて危険です。何を仕出かすか分からない…。それに、王宮不法侵入は死刑、でしょう?」
「…だな。サイレント、剣を渡してやれ。」
「…御意。」
ウィンヅにも促され、サイレントは迷いつつも剣を渡す。
サイレントは不安なのだ。
王子が少女の命の重みに耐えられなくならないか。
それに、目の前の彼女は__。
王子は少女に近づく。ウィンヅは少女が何か仕出かさないか、警戒する。そして王子と少女は檻を隔てて向かい合う。俯いている王子の表情を、床に座る少女は覗き込むことが出来た。その表情は__。
少女は胸を高揚させた。王子なら必ず、この世界を変えてくれる、と。
長い沈黙の後、王子は少女に尋ねる。
「…最後に一つ、いいですか?」
「まぁ、答えられたらな。」
「では…。何故、貴女が動いたのですか?貴女はまだ若い。これからの人生はまだまだ長い。なのに貴女はその人生を今、終えようとしています。…怖くはないのですか?」
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