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王子の声は、震えていた。アスクはまた少女が笑い出すのではないかとヒヤヒヤしたが、少女はいたって真面目に答えた。
「若いからこそ、立ち上がらねばならんのだ。私はこの世に未練はない。怖くはない。…私は世界がこのままであることの方が怖い。それに…私は闇属性の長だ。私は、私の責任を果たすのみ。」
「…そうですか。」
王子は剣を握り直し、剣先を少女の胸にむける。そして剣を自分の方に引きつけ、突き出す。
「…今、死ぬつもりはさらさらないがな。」
「えっ…?」
王子は少女のつぶやきを聞き取るが、動きを止めることは出来ず、そのまま少女の胸に剣を貫く。
明らかに感触がおかしい。
血も吹き出さない。
すると貫かれた少女の胸にガラスのようにヒビが入り、ボロボロと壊れていった。
唖然とする王子とウィンヅとアスクに向かって、少女は怪しく笑った。
「…最後まで気付かなかったな。まぁ約一名、気付いていたようだが…。さぁ、王子。賽は投げられた。おぬしのこれからの行動、期待するぞ。」
そして少女はガラスの破片のように粉々に砕け散り、その破片も黒い砂のようになり、やがて跡形もなく消え去った。
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