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女心とメロンパン
十分遅刻して到着したら、栞は案の定不機嫌だった。
ヤバいと思って、僕はとにかく謝った。
栞は、別に怒ってないからいいよ、と、誰がどうみても不機嫌な顔で答えた。
次の電車が来るまで、まだ三十分もある。
誰もいない、広い待合室に、二人で腰をおろした。
「今日、栞の好きな映画、テレビでやるよな?」
僕は栞に明るく話しかけたが、栞は、「うん」と、とても低い声で答えただけで、話は続かない。
「あ、でも栞はDVD持ってるんだっけ?テレビで見る必要ないのか。」
「…。」
栞の反応はなく、茶色のミトンで持った定期券ケースを、いじっているだけだった。
静まり返った待合室は、売店の冷蔵庫の音がよく響く。故障寸前の音だ。
確かに、遅刻したのは僕が悪い。
今日は、学校へ行く前に、学校の近くに咲いている、梅を見に行く約束をしていた。
多分今日あたりに咲くからと、栞の昨日のメールには、絵文字の数からも楽しみにしていることが、僕には伝わっていた。
しかし、僕が遅刻したことで、始業前に梅を見に行く時間は、なくなってしまった。
でも、梅は明日もきっと咲いているし、今日の帰りだっていいじゃないか。
「栞、今日学校終わってからいこーよ。」
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