朝未きの目合ひ

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「ちょっ…」 慌てた声を出す私を余所に侵入した手は私のお腹を撫でる。その手つきは言わずもがな厭らしい。 ゾクリと背筋が震え、思わず声が零れそうになったけれど下唇を噛み締めてなんとか押し殺した。 「早く言わねえとこちょこちょの刑な?」 「待って!言う!言うからっ!」 腕を掴み必死にそう言えば敬はもぞもぞと動かしていた手を止め「んー?」と私の言葉の先を促す。 「同僚だよ、ただの同僚っ」 「ただの同僚がこんな時間になんの用だよ」 「なんか新歓の事で相談?みたいな…」 「新歓?そんなのあんの?」 背後から返ってくるあっけらかんとした敬の声に思わず“はぁ?”と強気な声が出そうになった。 「この前言ったよ」 「聞いてねえよ」 「言った、絶対言った!」 「知らね」 ぴしゃりとそう言い返した敬は私の髪に顔を埋もれさすようにしてはクンクンと呑気に匂いを嗅いでいる。 文句のひとつでも言ってやろうと「ちょっと」と低い声を出したものの、 「だって俺、やなことすぐ忘れんだもん」 敬が次に放ったその一言に不覚にもがしりと心を掴まれてしまった。
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